唯一の民間委託白紙撤回!?金子保育園の反対運動

 民営化・民間委託化問題が全国各地で各地で発生していますが、反対運動が実り白紙撤回に持ち込んだ唯一(?)の例である東京都調布市立金子保育園の取り組みについて、関係者のご協力のもとでご紹介させていただきます。
<※参考文献:「守れ!公的保育 金子保育園民間委託反対運動報告書」(調布市立金子保育園父母の会)>
<※参考HP:調布市保育園父母の会連絡協議会HP

調布市立金子保育園民間委託反対運動の経過

94年9月 都立上布田保育園を市立民営方式により民間委託計画を発表
95年4月 都立上布田保育園を市立民営方式により民間委託を実施。委託にあたり福祉部長は「他の市立保育園の民営化は考えていない」という趣旨の発言をしていた。
95年
11/16
園長から父母会長に金子保育園を民間に委託する提案があったとの説明
11/23 金子保育園父母会臨時総会(問題の重大さに関わらず非常に短期間での提案であり、父母の理解を得ないままで委託実施をすることには反対するという決議。市長・市議会議長あてのはがき作戦開始)
11/26 第1回市説明会、70余名参加、父母会による反対表明
12/2〜4/13 民間委託対策委員会を有志で発足。毎週土曜日に会議を行った。
・ほぼ毎週「対策委員会ニュース」発行
・父母連協、保問協、その他の団体の協力を確認
・「白紙撤回を要求する陳情」提出
・市職労への共闘申し入れ
・全議員への資料配布
12/14 調布市議会福祉環境委員会で「白紙撤回を要求する陳情」審議。一部の議員の継続審議の主張も通らず、賛成少数により不採択
12/17 第2回市説明会、70余名参加、議論が噛み合わず
12/21 市職労との話し合い(3月議会上程阻止の方針を確認)
12/24〜 地域へのビラまき
96年
1/14〜
あらたな署名活動開始。はがき作戦第2弾開始(市長、議長、議員あて計4600枚印刷)
1/21 「民間委託と調布の財政」学習会(保問協、公的保育を守る会との共催)
市役所内での「一声運動開始
1/28 金子父母会臨時総会、父母会費臨時徴収(各世帯500円)を決定
2/6〜 保問協による毎週駅頭宣伝
2/9 決起集会(市職労主催)
2/12 民間委託反対集会(調布市南口広場で約100人参加。横断幕、立て看板、のぼり、風船で盛り上げ、ゼッケンやタスキで市民にアピール。子連れのお散歩デモ
2/15 父母連協全体で委託問題に取り組む方針を確認。対策委員会への5万円の援助金を決定。
2/19 市職労との話し合い(「現行体制で新規事業を行えば3月議会上程はしない、との約束を取った。そのための協議をしていく。」と発言。
第3回市説明会、約40名参加(「市職労と協議中ではあるが、あくまで3月議会上程の準備をしている」との発言)
2/23 署名提出集会、参加33名。市長室での声明。横断幕・ゼッケンで市庁舎練り歩き
3/1 第2次署名提出行動。福祉部長との交渉(「3月議会に条例改定案と関連予算を計上する」「市職労が現行体制でやるといっているんだから、やってもらわなければ困る。しかし1年かけても交渉はまとまらないだろう」との発言)
この時点でのその他の情勢 ・検討委員会(市職労と市側の協議機関)は3、4回開催されているが平行線で進展なさそう
・市長が委託を協議している私立緑ヶ丘保育園に出向き、「96年度委託は中止。将来的には複数の公立保育園を委託する計画」と発言
・私立緑ヶ丘保育園では「委託を受ける用意はあった。今後、改めて提案があれば委託を引き受ける。」と父母に説明
3/4 署名最終提出(総計:市長宛32055名、議長宛31172名)
3/15 市議会傍聴(「公共団体に保育園を委託できる」とする保育園条例改定案が賛成多数で承認される)
3/19 市議会傍聴(「96年度実施中止と保育の充実を求める」陳情が継続審議に)
3/30 第4回市説明会(「委託の体制はできたが、組合が現行体制で新規事業をやるといっているので、当面それでやってもらうしかない。しかし、現行体制での実施は保育の質の低下が懸念される。年度途中での委託の可能性もある。」)
4/7 明日のための保育集会(公私立の父母、保母その他約50名の参加で運動のまとめと今後について話し合う)
2001年
7/7
調布市立深大寺保育園の建て替えに合わせて、民間委託する方針が発表される。
2002年
10月
調布市立深大寺保育園の民間委託予定

金子保育園民間委託反対運動の関係者による文章

●公立保育園の民間委託が提案されて
 調布市の保育を巡る状況と父母のねがい
 水谷孝男(調布市保育園父母の会連絡協議会元会長)
 <「ちいさいなかま」96年3月号掲載、金子保育園民間委託反対運動報告書(98年11月発行)掲載>
 (この文章の転載についてはご本人のご了解をいただきました。)

  調布市の保育状況
 調布市は人口約20万人、交通の便に恵まれた多摩地域にあって、都市への通勤人口が多く、バブルのはじけたあとも都市化・マンション化が激しい自治体です。保育園は、戦後間もなく設置された三園(都立1現在市立・私立2)と、1962年から81年の19年間にかけて設置された19園(公立10・私立9)の計22園。ここ14年間保育園の設置はされておらず、逆に二つの私立園が、経営上の理由により廃園となっています。現在、保育園の低年齢児枠(0・1・2歳775人に対して待機児が195人:95年9月、待機率25%)の拡大とともに産休明け保育延長保育などが緊急問題として明らかになっています。障害児の受け入れについては全国の自治体にさきがけて実施した経過はあるものの、その制度は20年以上にわたり大きな進展はなく、職員から行政への要求も受け入れられず、現在も指定園方式で運営されています。
 87年に市立保育園で起きたガス爆発事故で3名の職員が重傷を負い、この事故をきっかけに父母の保育行政に対する不信感が表面化し、園長不在(未設置園)の解消安全性の確保特例保育の完全実施などについて保育関係職員の協力のもとで改善してきました。
 92年度の保育運営研究会(公私立の園長・職員、私立父母と父母連協、保問協、行政担当部課により構成)の報告では、障害児保育の充実、3歳未満児の枠の拡大、保育時間の延長の対応などがだされています。一方で吉尾市長とそれを支える議会与党は、バブル期の勢いで市役所に隣接する文化会館の建設に350億円(市の年間予算約680億円)を費やすなど、土木建設への予算の重点配分をしています。今後も文化会館の維持費だけで年7億円を支出しようとしており、このうち光熱費だけでも約2億5000万円を費やすといわれています。市立保育園一園あたりの予算が約2億円であることを考えると、文化会館の有効な利用は願いつつも、これらを建設し管理する費用などが市財政を圧迫し、それを財政難の理由として保育施設や職員を充実しようとしないのはどういうことか、ということが問題になっているといえます。保育園は、調布市をふるさとにして育ち、将来の社会を担い、お年よりの生活のめんどうをみていくであろう子どもたちの育つ場なのですから。

  元都立布田保育園の民間委託について
 調布市では、昨年4月にも元都立の上布田保育園を市立民営方式により民間委託しました。94年9月に民間委託の方針を一方的に父母に通達し、50年近い保育実績をわずか半年で行政の手により切断し、民間委託を強行したのです。全職員が入れ替わったことによる子どもたちへの影響が少なくなるよう、父母は園との調整に多くの時間をさき、アンケートをとったりして状況把握につとめています。委託にあたり福祉部長は他の市立保育園の民営化は考えていない、という趣旨の発言をしていますが、それは明らかに他の市立園との分断を考えた上での発言で、その半年後には市立金子保育園の民営化の方針が出されています。このように、調布市における保育行政は、職員や父母・子どもの意見に耳を傾けず、予め行政内で用意した方針を行政の力で強行する姿勢をとっているといえます。92年度以降「保育運営研究会」は開催されておらず、さらに今後の保育計画の策定にあたり、父母などの代表を入れ、意見を反映させようとはしていません。

  市立金子保育園の民間委託について
 95年11月、吉尾市長から市立金子保育園の民間委託が出されました。その理由として、財政難、リストラで職員を増やせず現状の職員体制では多様な保育ニーズに対応できない、などをあげています。民間委託で余裕が出た職員を他の市立保育園の低年齢児枠の拡大、保育児間の延長、障害児保育の充実にあてるというのです。まるで将棋の駒を動かすように職員を移動させ、職員の労働負担を増やす形で地方版エンゼルプランを実施しようというのです。市には、住民の参加により、「ふるさと」とよべる街づくりをしていこうという観点が消失していることは明らかです。
 12月17日の金子保育園での説明会では、助役をはじめとする13人の理事者側職員が前面にならび、一方では50人以上の父母などがホールをうめつくし、民間委託反対の声をあげました。説明している理事者も財源問題については苦笑するしかなく、矛盾点を感じながらの説明といわざるを得ない内容でした。父母の会では「子どもの権利条約3条」に示されるように、子どもと職員と父母の信頼関係を守り、子どものしあわせを崩さないために急遽12月議会へ民間委託白紙撤回の署名を提出しました。
 しかし調布市議会は社会党・共産党による継続審議の主張に対し、自民党・公明党による多数によって民間委託白紙撤回署名を不採択とし、十分な議論もせずに門前払いともいえる対応をしました。現在は、毎週1回対策会議を開き、このような市のやり方に対して、子どもたちのすこやかな成長を願って、最善の策を検討しています。しかし、わずか4ヵ月後に民営化を行うという市のやり方をまえに、十分な対応ができない状況があり、多くの父母や子どもたちが、あわただしい年末年始を迎えました。保育園の職員たちは金子保育園だけでなく市立全園の職員に委託反対の文書を配布し、各園で父母に対しても説明がなされています。職員の負担を増やすことなく、予算を増やして保育制度を拡充することが求められているにもかかわらず、市理事者として責任をもって最後まで職員と話しをせず、保育職場の労働負担を増やす形での多様な保育ニーズへの対応をさせようとするところに調布の保育行政の問題の本質があります。現在条例改正が出される三月議会へ向けて、父母連協、保問協などが呼びかけ団体に加わり、あらたな署名を作成し、再度四月民間委託の中止を訴えていくための行動を準備しています。また父母連協・保問協・公的保育の会では、今回の問題は金子保育園だけの問題にとどまらず他の市立園の民間委託民間保育園へ悪影響が出ると判断し、行政の下請けによる安上がりの保育、行政の保育からの撤退、保育園職員泣かせの保育行政につながる民間委託を許さないために、臨時総会などを設定し、市内の諸団体とも手をつなぎ、全保連の全国署名と併せ、民間委託中止の署名行動、学習会、対市交渉、議員への働きかけをしていく予定です。
 今後は調布の民間委託が近隣の自治体に影響を与えることも考え、他の自治体にも民間委託を許さない運動の輪に加わっていただけるよう協力をお願いしていく予定です。みなさんのご協力とご理解をお願いします。
  コラム「なぜ民間委託が阻止できたのか?」文責:KAKU

 全国各地で民営化・民間委託の嵐が吹き荒れていますが、僕が聞いている範囲では「期限の延長」「保育条件の確保」などの成果しかしりません。金子保育園ではなぜ白紙撤回できたのか?ということが一番の関心事でした。運動に関わった皆さんのお話をうかがい、報告書を読ませていただき、外野の僕がそれをまとめるという無謀な試みをしてみると
@あまりにも短期間で無茶な民間委託計画であったこと
・たった5ヶ月弱前での発表という無謀な計画だった
・財源難というだけで試算計算がされていないという杜撰な計画であり、説得力がなかった
・都立保育園の市立民営化の時に他の市立園は民間委託しないとの発言があった
A市民へのアピールがうまかった
・父母会、父母連協、保問協、それぞれが独自の取り組みと連携をして市民、行政、議会にアピール
・運動のプロではなく素人として、署名だけでなくユニークで楽しめる作戦も取り入れたことにより運動に勢いができ、普通の父母の理解と協力があった
B署名とはがきの量が大きなプレッシャーになった
・署名数3万以上、市長や議員へのはがきが4600枚(印刷)などの市民の声を集めたことが行政や議会への大きなプレッシャーになった
・それを保障するために父母会・父母連協が手続きをふんだ上で財政的な支援をした
・これらの声を行政も無視できず、最終的には「市職労が現行体制でやるならば」との妥協を引き出した
●知恵をしぼって活動に広がりを
 調布市立金子保育園民間委託問題奮斗記
  武田佳朗(東京調布市金子保育園父母の会元会長)
 <「ちいさいなかま」96年9月号掲載、金子保育園民間委託反対運動報告書(98年11月発行)掲載>
 (この文章の転載についてはご本人のご了解をいただきました。)

  チョベリバな会長
 調布市立金子保育園の民間委託問題をひとことでいえば、「公立保育園ではその運営に限界があり、よって民間に委託しよう」ということであった。しかもこれは、発表からたった四ヶ月あまりで(発表は95年11月下旬、実施は96年4月1日)実施にうつそうというきわめて強引なもの。保育園の関係者のみならず、市民を無視して行おうとしたのである。しかし、ことの本質はそこにあるのではなく、市側が保育行政から手を引き(いわゆるリストラもどきの一環)、さらには市長が国政選挙出馬をにらんで、地方版エンゼルプランを積極的にすすめたいことにある(らしい)。
 さて、こう書いてしまえば「ちいさいなかま」読者のみなさまはおおよそ察しがつくと思うが、これは福祉の切り捨てであり、弱いものいじめの構図が感じられる。しかしそれだけいっておしまいというわけにはいかない。日常こうした問題にあまり熱心でなかった私が、どのようにとりくんできたか、読者のみなさまからお叱り、ご批判を承知で、ちょっとちがった観点からこの問題について考えてみたい。
 まず私自身について少し触れておきたい。私にとって今回の騒動はまさに青天の霹靂であった。その年、なぜ父母の会会長を引き受けたかといえば、私自身が、地元育ちということで、断りきれなかった、というのが正直なところである。冗談めかして「こんなこと(民間委託問題)になるのがわかっていたら、会長は引き受けなかったのに」などといっていたが、これはホンネであった。
 私はこれまで幼稚園と保育園のちがいすら知らずに過ごしてきたし、それこそ私の人生に一度も登場しなかったようなボキャブラリー次つぎと出会うはめとなったのだ。そのような人間が、会長を引き受けたことがまちがいだったが、あともどりはできない。ホントに困った。チョベリバだ。

  すべての父母に向けて
 これまで金子保育園の父母の会の活動は、一部献身的な父母によって支えられてきたといえる。しかし今度ばかりはそれでは困る。なんとしてもことの重大さを父母のみならず各方面に伝えなければいけない。そしてなんとしても子どもたちを守りたい。そのために、調布市保育園父母の会連絡協議会ニュース(以下父母連ニュース)に状況報告などを掲載させてもらった。それは、これまでの格調高いニュースの論調をうちくだき、「とりあえず子どもを預かってくれればいいワ」といういわゆる無関心層の父母ににまで対象を広げ、問題意識の共有と活動の拡大を図った。以下、そのなかから一部抜粋するので、その意図を感じとっていただければさいわいである。

  大変なことになったゾ!11月付父母連ニュース
 会長でありながら、私が保育園に行く機会はそう多くない。この日バザーの反省やらクリスマス会について相談する予定で、ノコノコと保育園に園長を訪ねた。そこで園長から金子保育園の民間委託についての報告を受けた。しかし園長も具体的な内容については一切わかならい状況であった。とりあえず私は父母の会の役員に民間委託があるらしいことを報告し、対策を講じることとした。しかし父母の会として動くには全体の了解が必要であり、当然緊急に父母の会総会を開かねばならないと判断した。あまりにも突然で、バザーもクリスマス会もいっきにブッ飛んだ。今年の「クリスマスはクロウシマス」など冗談をいっている場合ではない。

  金子続報(保育園児編)12月付父母連ニュース
 あたしは、保育園の三角お屋根についている時計の長い針がくまさんのところにくるまでに、朝、保育園に行くの。そうすると先生が「おはよう」って声をかけてくれる。かぜをひいているときには「よくがんばってきたわね」とか、元気のないときは「みんな待ってるよ」って声をかけてくれる。だからつらくてもがんばっちゃう。でも金子保育園の先生がみんないなくなっちゃうって聞いて悲しくなっちゃった。そうなったらもう行きたくないけど、パパやママお仕事あるでしょ。本当に困っちゃう‥‥‥。

  金子第3報(ヤンママ編)1月付父母連ニュース
 いままで民間委託ハンターイって、父母会でがんばってんのは知ってたの。何となくよくないんだろうなーって感じはわかるけど、はっきりいってよくわかんないし、役員がやってくれてるからイイヤって感じでバッくれてたわけ。連中、ちょっといっちゃってる感じだしね。でもそういうこというと、チョーヒンシュクだからいわなかったけどね。でも、去年の議会で「陳情」が否決されてから、まえよりもビラまきとか、署名とかけっこうみんながんばってる感じで、よくわかんないけど、たまにはつきあわなきゃ悪いと思って「ご協力おねがいしまーす」なんてダサダサだったけど、やっちゃったりしたわけ。それで、まじな話とかしちゃったりして。父母会の役員って、もっとまじめでいっちゃってるとか思ってたけど、けっこう普通なんだな、コレガ。(中略)でも、保育は人手がかかるだけであんまし商売にならないし、あたしみたいにふだん政治なんて考えない人ばっかだと思って、やりやすいところからお金を削るって感じが‥‥‥(略)

  金子第4報(闘争編)2月付父母連ニュース
 我われは一月以降一貫して説明会開催を拒否してきた。これを受けることによって四月の民間委託を既成事実化してしまう恐れがあるからだ。しかし、このままでは平行線であり、また敵の強行突破による四月の民間委託という最悪のシナリオもありうる。そこで調布市議の環境福祉委員長との接触を敢行した。これまでにないあせりが感じとれる。議会、理事者、市職労でいったい何が起こったのか‥‥‥。抜粋なので内容についてはややわかりずらい点だ多いと思うが、このような形で一人でも多くの人に関心をもってもらえるよう、ない知恵をしぼって活動に広がりをもたせようと考えたのだった。

  96年度4月民間委託中止
 今回の件を簡単にまとめると次のようになる。発表から四ヶ月での実施は子どもを無視しているということ。福祉にこそ予算を計上し、充実させる必要があることなどを訴えてきた。また、政治に関しては素人集団ではあるが、ほぼ毎週末署名活動を行い、議会に陳情を提出、議員にも直接会い、他園にも出向いて理解を求めてきた。そして「96年度4月民間委託中止」の結論となった。これは市長宛の要請書、議会宛陳情書合わせて六万人をこえる市民の声を集めた結果でもある。生活の主役は市長でも議会でもない。私たち市民一人ひとりであり、その声によって政治を変える力になることがわかった。しかしながら、三月議会において、「公共団体に保育園を委託できる」という保育園条例改正案がすでに承認されてしまった。このことによって、市内公立保育園十園すべてが民間委託の対象となった。96年度4月に関しては委託は中止するが、将来的には複数の園が民間委託される可能性があるということを意味する結果となったのである。

  父親不在の保育園
 これだけのことを、たった四ヶ月で行ってきたのだから、どうしても父母の協力体制が必要になる。そのなかで父親は、少なくとも金子保育園では影がうすい。私も送り迎えはほとんどできないし、保母さんと話をする機会もあまりない。今回の件で、少なくとも自分自身は積極的にならざるを得なかったが、これだけのことが怒っても父母の会への父親の積極的なかかわりは多めにみても5〜6名にとどまった。私が父親を必要と感じたのは、第一に理事者(市側)との交渉においてである。女性を蔑視するのではないが、オトコは(私だけかもしれないが)日常に会社でボロクソにいわれるのに慣れている。その点において、男の方がブチョーだのジョヤクだのといったエライ人たちに対しては話がしやすいように感じた。一方母親には「市長出てこい!」というパワーがあり、まさに「母親は強し」であった。こうしたいわば硬軟おりまぜた活動が保育園の父母の会らしい活動であるように感じた。母親ががんばっているだけに父親のふがいなさがめだった。父親の参加が少ないのは、仕事のつごうが多いのだろうが、今後は、父親を子育てに関わらせる努力が、より必要になってくるのではないだろうか。今回、父母の会は民間委託反対で活動してきたのであるが、いわゆる市民運動とは気持ちのなかで一線を画していた。父母のなかにもさまざまな方がいる。ある意味では運動の広がりをつくらないと理事者には対抗できないのは事実ではあるが、父母の会は政治団体ではない。結果として一部組織におせわになることは少なくないが、常に一定のスタンスを持ち、バランスを保つように心がけた。さいわい、金子保育園父母の会には、一定の政治目的をもってこの問題を考えようとする父母は一人も見うけられなかった。これまで、こうした活動に対して、自分自身も色眼鏡で見ていたのだ、と深く反省させられた。このように、せっかくすばらしい活動をしていても、なかなか理解を得、まして協力を求めることはむずかしい。役員は順番でというように、係としての意味合いが強い。むずかしいこととは理解しつつも、さまざまな機会を通じて、お互いに痛みのわかる、いたわりあえる組織を、そして社会を構築したいと説に願っている。およばずながら、今後も協力させていただきたい。
  疑問「その後はどうなったの?」文責:KAKU
 最終的には「市と市職労が増員なしでのサービス拡張で合意」し民営化は阻止されたのですが、「実はこれが狙いだったんじゃないの?」「市長がアドバルーンをあげて、民間委託に関しての市民の反応を見たんじゃないの?」という深読みをされる関係者もおられました。では、その後の状況はどうなったのでしょうか?このページをご覧になった関係者の方々にぜひ教えてほしい疑問がいくつかあります。
@公立園の保育の質はどうなった?
・保育の量が増えて、職員の配置は相対的に減ったのだから、保育の質はやはり落ちたのでしょうか?
・それとも父母や職員との連帯感が強まり、前よりもいい保育園作りができるようになったのでしょうか?
A新たな民間委託化はどうなるのか?
・来年10月市立深大寺保育園の建て替えに伴い、民間委託の計画が発表されているようですが、行政も前回で懲りているはずですから、もっとうまく計画を進めることでしょう。この計画を阻止できるものなのか?
・これが成功すれば今後されに民間委託、民営化が進むのでしょうか?

 今後の調布市の動きにこれからも注目していきたいと思っています。
●みんなでつくる楽しい「父母の会」活動A
 「調布の子育て仲間」はパワフルだぜ
 佐藤正弘 調布市保育問題協議会前会長
 <「父母の会ハンドブック」(東京保問協97年3月発行)金子保育園民間委託反対運動報告書(98年11月発行)掲載>
 (この報告文を書かれた佐藤さんは2001年9月に48歳の若さでお亡くなりになりました。心よりご冥福を祈ります。この文章の転載については奥様のご了解をいただきました。)

 調布市の公立保育園の民間社会福祉法人への委託がとりあえず中止となり、現行の公立保育園の人員体制のままで、延長保育事業や乳児枠拡大などの新規事業が行われ始めてから10ヶ月がたとうとしています。昨年(96年)の手帳を開いてみました。黒々としたスケジュール表のほとんどがこの委託関係のもので、調布保問協がこの問題に全力投球していたことがわかります。そこで、「調布の子育てパワー」の一団体として、どう関わってきたのかを見つめ直してみたいと思います。

  突然の公立保育園の民間委託説明
 思えば本当に突然でした。一昨年の11月に、「公立保育園である金子保育園を、民間社会福祉法人に運営委託し、保母を他の保育園に移して翌年4月から新規事業を行う」という説明が行われました。実施まで約半年しかなくあまりにも性急であり、市民との合意がなされていたわけではありません。また、何よりも保育園が変わることによる子どもたちの影響を重視し、父母の会として、調布市議会に白紙撤回を求める陳情を提出しました。これは、あっさりと不採択となりました。新規事業が子育て支援のために必要だという議論が中心となり、その実現方法として委託でよいのかという問題がほとんど議論されなかったのです。
 この時期はずいぶん悩んだように思います。延長保育や乳児枠の拡大等は父母の要求でもあり、利用者である父母の間でも、「民間保育園の保育内容はとても良い。なぜ民間委託がいけないの」など様々な意見があったからです。ちょうどその頃には、金子保育園「父母の会」を中心とした「対策会議」が週1回開かれていました。「この問題は、1つの保育園のみならず全部の保育園、ひいては調布市市民全体の問題だ。」という位置付けで、父母の会を中心とした子育て仲間の輪が作られていたのです。先ほどの問題についても、ずいぶん悩み、語り合いました。

  行政と話し合ってわかったこ
 「とにかく、私たちはプロじゃないんだから、わからなければ学習会を開こう。行政側ともっと話をしていこう」
 この結論が出るころには、「調布の子育て仲間でなんとかするぞ」という気運がかなり盛り上がっていました。1月末には学習会がもたれました。約100名の参加があり、大きな関心事となっていることがわかりました。ここの中で、
@調布市は行財政改革(いわゆるリストラ)の下で、お金をかけずに新規事業を行おうとしていること、
A調布市には財源があり、予算を増額して新規事業を行うことは可能であり、お金の使い方に問題がある事、
などが明らかにされました。この事は数日後に行われた行政との懇談会の中で、財源難というだけで試算計算がされていない事がわかった点でも裏付けられました。本来なら、新規事業を行うためには、施設の拡充や職員の増員のために保育予算が増額されるべきですが、リストラとの関係で公務員や保育予算は増やすことができない。そこで苦肉の策として民間に肩がわりさせてしまおうというわけです。では民間保育園への助成が充分かといえば、決してそうではなく民間保育園の「がんばり」によって支えられているのが実情です。「ふむふむ。すると行政が宣伝するように民間保育園の方が良いから‥‥という議論ではなく、この委託方法は、民間の法人にとっても大変なことになるのだな」
 私たちは少しずつ学習しながら運動を進めていきました。鉄瓶がたぎるように少しづつ熱くなっていったのです。

  パワー全開。なんでもやってみよう
 2月から3月にかけてはパワー全開の毎日。週3日の駅頭宣伝、駅前公園での大集会。「うんと楽しくやろう」ということで、歌ありバイオリン演奏、タンバリン等々、保育園らしい集会でした。その他、「ムカデさんデモ」(10人くらいでいろいろな方向に歩いて市民に訴える)「ミスタードーナツ作戦」(単にゼッケンをつけて店の中でドーナツを食べるだけであるが、市民にもアピールできて、子ども達にも好評。はじめからの企画ではなく成り行きでそうなった)等々‥‥。極めつけは「署名を市に届けるついでに市役所内をお散歩しよう」(市役所内お散歩宣伝)。ゼッケンをつけ、横断幕を広げて30名以上の仲間が市役所内全部をねり歩いたのですから、職員もびっくりしたでしょう。集まった署名は約3万。父母の会のお母さんが、提出の際に、「わが子を手放すようだねえ」と言っていたのが印象的でした。(※ページ管理人注:この他自転車に「委託反対」の意見看板をつけるという取り組みもあったようです)
 思えば、保問協が指導性を発揮したというわけではなく、みんなで「うーん、うーん」と悩み考えてきたこと。父母の会が明るくたくましかったこと(特にお母さんパワー)委託問題のみならず、子育てについて大いに語り合ったりしたことが、パワフルの原動力じゃないでしょうか。この問題を契機にまた子育て仲間の輪が大いに広がりました。



管理人:KAKU  更新日:2002/12/01

全国保育園ふぼねっと